BALLISTIC TIMES Vol.22

昔の事を話そうか。

そう、それは20年近く前、時期はもう覚えていない。

当時私は中学3年。
公式戦ではなく、何かのカップ戦だった事は確かだ。

今もそうだが私は、スターティング5に入ったり、シックスマンだったりとチーム内で中途半端な位置にいた。
ある程度なんでもこなすが、ズバ抜けず、これと言って華のあるプレーもできない、そんなプレーヤーだった。

話を戻そう。

その日もベンチスタートだった。
前半(当時は前後半制だった)をなんとかリードして折り返すと、監督から名前を呼ばれた。
私はチームで揃えた、当時NBAで流行り始めていたサイドがスナップで外れるタイプのウォームアップパンツを脱ぎ、NIKE社製のAir Ballistic Forceの紐を締めコートに入った。

両チーム共に数ターン程オフェンスを繰り返した後、相手チームの一人が交代した。
代わりに入ってきたのは、色白の小柄な子供だ。

そんな事は気にも止めず、私はゆっくりとボールを運びセンターラインを越すと、その子供がぴょこんとくっついて来た。

私は味方ポストプレーヤーの動きに注視しつつ、この子供を一気に抜き去ろうと彼の左側をドライブした。

一度ボールがフロアに弾み手に戻ってきたタイミングで、彼は素早く私の背後に周り込み、私の体に一切触れる事なくボールを軽くティップすると、あっさりスティールを成功させた。

一瞬あっけに取られながらも、すぐにディフェンスの為に全速力で自陣に戻る。

このスピードならレイアップに入るまでになんとかゴール下で止められそうだ。 最悪ファールで止めてもいい。

そんな事が瞬時に脳裏に浮かんだ。

だが次の瞬間彼は、3ポイントラインの外側でピタリと立ち止まった。
トップスピードで戻っていた私はそのクイックストップに反応しきれず、彼を追い越す形でバタバタと止る。

すぐに振り返ると、美しいシュートフォームからちょうどボールが放たれる瞬間であった。

指を離れる最後の瞬間まで正確に回転を加え続けられたそのボールは、恐ろしく精密な放物線を宙に描くとリング触れる事なくネットに吸い込まれていった。

この事だけは鮮明に覚えているが、この時の自分のコートタイムやゲームの勝敗すら思い出せない。

恐らくこの一人の子供の登場により逆転負けしたのだと思う。

当時の私はこの少年が後に日本人初のNBAプレーヤーになるとは知る由もなかった。

その後、バスケットボール経験者を見つけてはこの中学1年生だった田臥勇太選手とマッチアップした大昔のエピソードを披露している。

そして私は今でもコートに立っている。

著:Balistic Timesの中の人①